つくる女性

WOMEN MAKE

リーガルのものづくりへのこだわりと信念。
同様に心を込めて、それぞれの作品に向き合う女性をご紹介します。
ものづくりへのこだわり、ファッションへの考えなど、そのライフスタイルについて語っていただきました。

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第13回 暮らしの装飾家 ミスミノリコさん

店舗のディスプレイデザイナーや出版物のスタイリストとして活躍するかたわら、暮らしのデコレーションアイデアや、手仕事の楽しさを発信しているミスミノリコさん。昨年は、洋服や布小物の穴やシミを素敵に修繕する方法を紹介する書籍「繕う暮らし」を出版された。早速、著書で紹介されている修繕方法を実際に見せていただいた。

彼女が手にしたのは、穴の開いた靴下と「ダーニングマッシュルーム」という、名前の通りキノコのような形の道具。傘の部分を穴の下に当てて経糸をかがる。続いて、よこ糸を拾いながら横に針を走らせた。流れるような針の動きに見とれているうちに、穴の上には、赤とグレーの糸が織りなす布が生まれていた。
「補修例を書籍に載せるため、多くの方から、穴が開いたり、シミがついた洋服や布小物をお借りしたんです。そのままでは使えないものなのに手元にあったということは、持ち主の思い入れがそれだけ強いということ。さらに『直したい部分』には、その方の日々がひそんでいる。思い入れや思い出を損なわずにお直しする責任を感じるとともに、やりがいも感じました」
ミスミさんが、こうした手仕事を日常的に取り入れてきたのは、ご両親の影響からだそう。
「自宅をさりげなく飾るのが好きな母、壊れたものはなんでも直す器用な父のもとで育ったせいか、小さい頃から手を動かすことが大好きでした。でも、繕うこと、直すことに深く興味を持ったきっかけは、数年前。大切な急須の蓋を、金継ぎという手法で直してもらったことでした。そのお直しの美しさに感激して、割れる前よりもっとその急須が好きになったんです」

直して、いっそう愛しい宝物になることがある。その経験を生かし、お繕いも同様に 「前よりもっと好きになる」ことを目指した彼女。ただ欠点をふさぐのではなく、糸の色や繕う形、技法を選び組み合わせることで、新たな魅力を生み出せる手法だと再確認した。
今は、書籍でできたご縁や、旧知の間柄からの誘いで「お繕い」のワークショップを開いている。直したい衣服などを持ち込んでもらい、ダーニングだけでなく、パンチングニードルという、ウールを針で刺してフェルト化し、穴やシミを覆う補修方法を学べるそうだ。
「先日のワークショップで、ある方が、ツタが刺繍された青いワンピースをお持ちになったんです。刺繍部分の布が弱り、着るたびに穴が開くという悲しい状態。パンチングニードルでのお直しを提案したところ、その方は山吹色のウールをチクチク。出来上がると、まるで、お洋服の上で黄色く丸いお花が咲いているようでした。この先また穴が空いたとしても、それはお花が増えていくということ。アンラッキーをラッキーに変える力がお繕いにはあると思います」
時々のテーマや季節感をとらえ、一瞬を形にするディスプレイの仕事。今あるものを長くいつくしみたいと、ひと針を刺す「お繕い」。時間軸はずいぶん違うけど、どちらも楽しいと話す彼女は、出版を機に、ディスプレイデザイナーの他に「暮らしの装飾家」という肩書きを定めた。この言葉が、きっとまた素敵な展開を呼ぶ。新たな肩書きが、彼女の朗らかな声で、私の耳に届けられたとき、そう感じた。

ミスミノリコ 暮らしの装飾家。神奈川県生まれ。
武蔵野美術大学卒業。 (株)サザビーにて、ウィンドーディスプレイやスタイリングの仕事に携わる。現在は独立し、店舗のディスプレイや雑誌のスタイリング、暮らしに取り入れやすい装飾や手仕事の提案など幅広く活躍中。著者として『繕う暮らし』『手作りスタンプのアイデア帖』(ともに主婦と生活社)がある。
http://room504.jp/